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泣いている君 [小説]

 

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君は泣いていた 


私の服が濡れるほどに泣いていた


他の人も服が濡れるほどに泣かれ、ほとほと困った顔をしていた


濡れるのが嫌で走って逃げる人も居た


必要な事なのに嫌われる 


私はとても悲しい


君は笑っていた 


満面の笑みを私に見せてくれた


でも今は苦笑い 


曇った笑顔は苦笑い


それはとても悲しい事だ 


でも周りの人は慣れてしまった様子


誰も君に目を留めない 


私はとてもさびしい


時折私の頬を撫でる君は優しい 


時折私の心を慰めてくれる君はとても広大だった


春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来て、また春が来る

その間、大まか決まった時期に君は長い間泣き、

違う笑顔を見せる


でも今は君の泣く時期がはっきりと分からない


君の笑顔が曇って見えない 


君の頬を撫でてくれる手は切なげで

君が慰めてくれた広大さは殆ど失われた


私は何もできない 


無力だ・・・無力だ・・・


でも、どれだけ掛かるか分からないけれど、いつか君を前と同じ位の満面の笑みにしてみせる

泣く時期が安定すればいつでも慰めよう


広大さを取り戻し、その手でまた優しく撫でて欲しい


星空の笑顔がとても綺麗な君・・・


タグ:小説

元気ですかー [小説]

 

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「ただいま。」


ルームメイトの彼女が帰ってきた。 



「お帰りなさい。」

と言いながら玄関へ向かい、荷物を受け取る。



「紅茶、飲む?」


彼女が聞いて、

「いいえ、今はいいわ。ありがとう。」

私が答える。



リビングで、彼女が買ってきてくれたマニキュアを塗る。


色はオレンジ。


左手の小指から始めて、今は親指。



「今日は何曜日?」

ソファに座って紅茶を飲んでいた彼女に突然聞かれた。


「月曜日よ。」

壁に掛かっているカレンダーを見ながら答える。


「明日は火曜日よね?」


「ええ。」


「そうよね、月曜日の次は火曜日よね。」


「当たり前。」


「そうね。」


ちらり、と彼女の方を見る。



何食わぬ顔で紅茶を飲んでいたけれど、少し怖がっているということを私は知っている。

 

左手を塗り終えて、今度は右手の爪を塗り始める。


まだ乾ききっていない左手の爪に注意しながら。



「今朝焼いたフルーツケーキは戸棚の二段目に入っているわよ。」

 

右手は親指から塗り始まって、中指まできたところで唐突に彼女が言った。



「そう。ありがとう。」


今日は、彼女は早く寝てしまうだろうけれど、私はきっと寝不足になるだろう。

 

真夜中。時計の針が全て十二に集まる時。


「こんばんは。」

 

静まり返ったキッチンの、戸棚の隙間に声をかける。



「どーも こんばんは。」

隙間の暗がりから声が返ってくる。

 

彼女はあの人が苦手らしい。


「今日はフルーツケーキがあるのよ。」


だからいつも、あの人とお話するのは私だけ。


タグ:小説 元気 猪木

ふうわり ふわり [小説]

 

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まっしろな布 ふうわり空から落ちてきて


母親はそれを、すやすや眠る我が子にそっと掛けてやった。


まっしろな布 ふうわり空から落ちてきて

幼女はそれを身体に巻いて、「あたし、おひめさまよ」とおすまし顔でクルリと回った。



まっしろな布 ふうわり空から落ちてきて


少女はそれを、朝露光るクローバーの上に敷いて、腰を下ろした。


少年がやってきて、「座ってもいい?」と聞いた。



まっしろな布 ふうわり空から落ちてきて



青年はそれを木に結んで日陰を作り、その下で青年と娘は優しい時間を過ごした。

まっしろな布 ふうわり空から落ちてきて


娘はそれでドレスを作り、青年と娘は永遠の愛を誓った。


まっしろな布 ふうわり空から落ちてきて


それは可愛い坊やのおしめになった。


まっしろな布 

ふうわり ふわり 


あなたの元へ ふうわり ふわり


アバター [小説]

 

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目の前でもう一人の自分を作っている。


普通のオンラインゲームのアバターなんか目じゃない。


自分の好きな見た目、格好にすることが出来る最新のものだ。

ここでは自分自信を自分の好きなように、理想のカタチにすることが出来る。


本当の自分を作り出すことが出来る。


そう、今目の前にいるもう一人の自分こそが本当の自分なんだ。


・・・?じゃあこっちにいる自分は本当の自分じゃないのか?


いや・・・でも今まで生きてきたんだからこっちが本当の自分のはずだ。


それでも、本当の自分は今作り出した目の前にいる方じゃないか。


そとの自分は型に入っているんじゃないか?


そっか、こっちの自分は今ある型に縛られているんだ。


だから本当の自分になれない。


本当の自分とかけ離れた存在になる。


そうだ、そうに違いないよ。


つまり型なんてなくしてしまえば完全に本当の自分になることが出来るんだよ。


なるほど、簡単なことじゃないか。


そうと分かればすぐに行動に移さなきゃね。


・・・何をすればいいんだ?

簡単さ。


型なんて失くしてしまえばいい。


そっか、そうすれば自分の好きなカタチになれるんだ。


『そうと決まればすぐ行動に移さなきゃね。』


白い部屋 [小説]

 

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あなたは今、真四角の部屋に居る。


右も左も白い壁だ。
 

あなたの後ろにはドアがある。


あなたの右後ろ側だ。

そのドアは木造で、ドアノブを回して開けるタイプのもの。
 

あなたは、そのドアを押して入ってきた。
 

あなたは今、椅子に座っている。
 

右と左の壁には何も無い。

後ろの壁にはドアがある。
 

前の壁には三つの丸いボタンが並んでいる。

どのボタンも形は同じで、五百円玉より少し大きい位のものだ。
 

白い壁の真中に、銀色に光る長方形の金属板がはめ込まれていて、それらのボタンは横並びになっている。


なんのボタンかは、あなたは全く知らない。
 

あなたはその前の壁に近く座っている。
 

三つのボタンはそれぞれ色も雰囲気も違っていて、あなたはそれを見つめている。
 

まず、あなたから見て左端のボタンは青だ。



随分と磨り減って、指の当たる部分は色が剥げてしまっている。
 

かなりの人がこのボタンを押したことが伺える。
 

何故なら、その青いボタンの下には、白い小さなプレートがついていて、そこにはゴシック体で「押せ」と書いてあるからだ。

そして次に真中のボタン。


これは黄色いボタンだ。


青のボタンと違って、特に磨り減っている様子もなければ、全く誰も押して無いというわけでもなさそうだ。
 

中心に少し黒ずんだ、手垢のような汚れが見える。
 

そのボタンの下にも同じく白い小さなプレートがついていて、そこにはやはり同じくゴシック体で「押」とだけ書かれている。

しかし、その文字の横に、明らかに人の手書きだと思われる、しかもいたずら書き的な文字で「引」とも書かれている。


更にあなたから見て右端のボタン。

これは赤い色をしている。

他二つとは違って、とても綺麗で、人が触れた形跡は無い。
 

それもその筈、そのボタンの下にある小さなプレートには「押すな」と書いてあるからだ。
 

危険を知らせる色にも赤は最適だ、とあなたは思った。

あなたは今、真四角の部屋で、左右を壁に挟まれ、後ろに木のドアを感じながら、目の前に並ぶ三つのボタンを見ている。


タグ:小説 ボタン

悲しいネジ巻き屋 [小説]

 

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ネジ巻き屋がいなくなった世界では、

誰かがネジを巻かなければ、みんな止まってしまうのだ。

だけど、ネジ巻き屋は死んでしまった。


誰かに殺されてしまったのだ。


みんなネジ巻き屋を殺した犯人を捕まえたいと思っているけれども、

探偵のネジもきれてしまったから犯人は探せないのだ。


もしかすると、犯人のネジも切れてしまったのかもしれない。

本当は、ネジ巻き屋になるには生まれつきの才能がいるのだけれど、僕は努力した。


結果、僕はネジ巻き屋になれた。


それは奇跡といっていいほどの出来事だった。

繰り返しになるけれども、ネジ巻き屋になるには生まれつきの才能がいるのだ。

何故ならば、ネジ巻き屋は自分のネジを巻かなくていいように、ネジを持たずに生まれた子供が選ばれるのだから。

だから、僕のネジがきれてしまったら、誰がネジを巻くのだろう? 


僕の関節から錆び付いた音が聞こえ始める。


水撒き [小説]

 

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ぼくはホースの先端を持ったまま、歩き出した。
 

ホースは意外な程よく伸びた。
 

ぼくは家の門を通って敷地の外に出た。

ホースはまだまだ伸びる。
 

所々、気になる所に向かって水を放った。
 

太陽に向かって伸びる雑草なんかに向けて水を向けていたけれど、そのうち何でも良くなった。
 

僕はホースヘッドの先端を操作して、水が広範囲に広がるシャワーになって出るようにした。
 

空中に向けて水を放つと少し離れた所に奇麗な虹ができた。
 

その虹を見て、ぼくは

「ああ、懐かしいな」
 
と思った。
 

そのまま歩いていると、公園で子供達が遊んでいる姿が見えた。
 

僕は公園に入っていって、グリップの握りを強め、空に放つシャワーの勢いを可能な限り強くした。
 

虹は少し大きくなった。
 

子供達は喜んで、さかんに虹を掴もうとした。
 

でも、どんな方向から虹に向かっていっても、誰もが同じようにすり抜けていくだけだった。
 

やがて子供達はずぶぬれになってしまった服を乾かすために水の届く範囲から遠ざかっていった。
 

子供達の歓声が過ぎていくと、ぼくはまた歩き出した。
 

まわりの豊かな緑に向かって思う存分水を放ちながら、公園の真ん中を突き抜けていった。
 


しばらく歩くと、どこへ向かう道なのか、ながいながいまっすぐな遊歩道に出た。
 

遊歩道の両脇には背の高い何だか分からない木が左右入れ違いに同じ間隔で植えられていて、古代の遺跡に向かう回廊のように見えた。
 

木々の枝葉のの影や、その隙間から漏れ込む光が、回廊のような遊歩道の床面に風に揺れながら動く仕掛けの模様を描いていた。
 

それはモノトーンに彩られた幾何学模様のタイルを思わせた。
 

すべてが美しかった。
 

ぼくはその遊歩道の両側の並木に盛んに水をかけながら、タイルの上を踏みしめていった。
 

この道はどこへ続くのだろう?
 

辿り着いた前には何があるのだろう?
 

それともこうして歩き続けて、ぼくはどこかへ辿り着く事が出来るのだろうか?
 


ホースはまだまだ伸びている。
 

この道が途切れるまで、ホースの長さはもってくれるだろうか。
 

不安とも、悲しみともつかない思いを抱きながら、ぼくは水を撒き続ける。


不幸 [小説]

 

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私は不幸だ。


誰からも認められないし見向きもされない。


別に虐げられるわけでもなくって侮蔑されるわけでもない。


ただ誰からも存在することを、生きていることを認められていない。


私は不幸だ。


だからいつも幸福である人達が羨ましかった。



けれども彼らが幸福なのは、不幸があるからだ。


不幸があるからこそ幸福があって、幸福があるからこそ不幸がある。

普通なんてものはそのどちらも存在しないと有り得ないものだ。


だけど、幸福であるというだけで周りに不幸を作る。


そして不幸があれば周りに幸福を作る。


そう考えることで少しだけ私はこの世界に存在を認められたように思えた。


だからこそ少しでも存在が認められるなら私は不幸でいいと思った。


私は不幸だ、知ってしまったから。


私が不幸であることで幸福が生まれるには、相手に私が不幸であることを知ってもわらないといけない。


存在も、生きていることも認められていない私には幸福を生み出すことが出来ないことを知ったから。

私は不幸だ、考えてしまったから。


私の不幸で幸福を生み出せないのなら、私には何も無い。

私が不幸であることに何の意味も無いのなら逆に幸福になれば意味が生まれるかもしれない。

その意味が周りが不幸になるということであってもかまわないと思ってしまったから。


それが酷いことと知りながらも。


私は不幸だった。


タグ:小説 不幸

pomera [小説]

 

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何故、作家が小説を書けるのか不思議でならなかった。



頭の中にある不定形のもやもやとした曖昧な、

そしてそのままでこそ魅力のあるものを,

その紙の上に書いて定着させてしまう不安に、作家はいかに耐えるのか。


書かれる前には,

すべてが微妙な色合いを保って優雅に揺れ動いているものを、

書く事によって、一つの色に決定してしまう。


そこで、失われる諧調を惜しんでいたら筆は進まない。


そこのところのあまりに原理的な矛盾をどう乗り越えるのか。


それがどうしてもわからなかった。


今現在、創作を楽しめるのは。


全ての作品は仮のものであるという仮説の上で,

一つ一つで足りなかったり、言い間違いたり。



もしくは

筆に乗りきれなくて、捨てたりしたものへの無限の未練を、

そのまま先への力にするということだった。

書き続ける事が何より大事なのだ。
 
 
 
 

 

写真は愛機、pomera DM10


万有引力 [小説]

 

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あれはそう、今日のように日差しの気持ちいい日だった。

その時期は次の研究テーマが思いつかなくてね。

気分転換にお気に入りのリンゴの木の下で昼寝していたんだよ。


うとうと気持ちよく眠りかけた時だった。

「ねぇリンゴが欲しいの。取ってくださる?」と声をかけられてね。

顔を挙げると、こぶりな女性がこちらを覗きこんでいたんだ。


「リンゴ、取ってくださる?」

と再びその麗しいレディが言うものだから、私は立ち上がってそのレディの期待に応えようとしたのさ。

だが、残念ながら私の身長ではリンゴに手が届かなかったんだよ。

私はその女性に気に入られたいものだから、「少々お待ちを」なんて強がって必死に頭をひねったよ。

どうすればあのリンゴが取れるのか考えたのさ。


そんな私の気持ちが通じたのか、私の頭にリンゴが一つコツンと落ちてきた。


私は、偶然に感謝しながら、しかしそんな素ぶりは見せずに、「これをどうぞ、お嬢さん」そう言ったのさ。
 


『では先生はその時に万有引力を閃いたのですね?なんと素晴らしい!』



いや、それを思いついたのはそのレディが私の頬にキスしてくれたときさ。


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